『自己啓発書としてもいける。』
想像してみて欲しい。
もしも次に目覚める時、あなたの顔が許容できないほどに醜くなっていたとしたらあなたならどうするだろう?
もしもあなたが自分の醜さのせいで今まで最も信頼していた親友たちとナチュラルな会話ができなかったらどうするだろう?
自分が気の置けない友人と居酒屋に入った途端ウェイトレスからカウンター席の客、あるいはちょうどその時にトイレからでてきた赤い顔の中年までいっせいにあなたの方を見て息を飲んだら、あなたならどうするだろうか?
今述べた三つの状況について、18の時の交通事故で顔を酷く損傷した英国人男性がどのように対応したのかがこの本には書いてある。
人間の生の感情が包み隠さず、率直に。
読み手は痛々しい思いをせずにはいられない。
誰だって自分の顔の醜さには思春期の時に悩んだことがあるだろうから。
一読後、思わず感嘆の溜息をもらした。
交通事故で顔を酷く損傷してしまった英国人男性の手による社会復帰体験記なのだが、実に考えさせられる本だった。
私は顔に再生不可能な程度の傷を負ったことのない人間だが、自分の醜さに顔を覆いたくなることはしばしばある。
自分が嫌になることもある。
そこからどうするべきなのか、どうすればよりよい状況へと進むことができるのかが非常に丁寧に、淡々と書き連ねてある。
文章の淡白さは最初は退屈だったが、絶望的な状況からの社会復帰の想像を絶する苦しさをつづる場合、淡白な文体の方がリアリティーがあった。
素晴らしい。