『遊び心ある数学の応用にクスリと笑いを誘われます』
本書には随分と笑いました。数学が得意な人の思考は筋道だっていてその跡を追うことが容易です。私も数学は嫌いではないので、著者の遊び心のある数学的な解釈や男女の関係に対する割り切った指摘には心をくすぐられます。数学が嫌いな人がどういった感想をもつかは分かりませんが、数学が好きな人には大いに受ける本だと思います。以下に大笑いした箇所を抜粋します。
「美人は3日で飽きるが、ブスは3日で慣れる」…容姿の美しさという一種の刺激に対して慣れる(飽きる)心の動きを「減少指数関数」で表わすと、刺激の大きな美人の「飽き」の初速度は刺激の小さなブスのそれよりも大きい。ここまではフムフムなのですが、それを受けて「しかし、誤解してはいけない。どんなに飽きがきても、下でスタートした人と上でスタートした人の位置は逆転しない。刺激の差は小さくなるが、依然として差はなくならないのだ(P. 26)」という突き放した指摘には爆笑しました。
「こんなはずじゃ…」…新婚カップルが理想と現実のギャップにどこまで耐えればよいのか、という問題をソフトウェアのバグの個数を描いたゴンペルツ曲線を用いて説明しています。この曲線はある時期までバグの件数が増え、極大を経て次第に減少する形をとります。具体的には1週間に何回気に入らないことが起こったかをメモしておき、その数が増加から減少に転じたならば、もう不満は終わりは見えているのです。ちなみにソフトのバグ出しの場合、人為的にバグを探して極大を前倒しさせるそうで、男女の場合はこれが新婚でいく海外旅行にあたるのではないか、ということでした。文中のポツリとした指摘も割り切っています。「もし、毎週の不具合の回数が減らない場合はどうするか。もちろん、そんなソフトは不良品であるから廃棄する。カップルも不良品。別れたほうがいい(P. 60)」。
突き放した指摘が好きな人にはお勧めの本です。
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