『イギリス側から見た明治日本』
　Olive ChecklandのBritains Encounter with Meiji Japan, 1868-1912（1989年出版）の翻訳。
　著者はシドニー・ジョージ・チェックランドの夫人。夫君と協力して著したイギリス史の著作が多数ある。グラスゴー大学で明治期に留学してきた日本人の記録を調査したのをきっかけに日本に関心を持ち、80年代には数回来日して研究を行っている。その成果の最初のものが本書。
　第一部はお雇い外国人について、第二部はイギリスに留学した日本人たち、最後にイギリスと日本をつなぐネットワークについて論じられている。造船や鉄道など技術にまつわる話が中心となっており、全体としては、のちに日本が技術大国として成長する原点を明治期のイギリスに求めようという試み。
　しかし、内容はいまいち。日本語が不得手というハンディのため、細やかさに欠ける。雑駁な議論に終始していて、目新しさがない。明治維新、お雇い外国人、明治日本とイギリスの関係といったテーマは、すでに日本側で精緻に進められている研究分野であり、それに比べてしまうと物足りなさが残る。
　イギリス側から明治日本を評価するという点では興味深いが、著者の目はどうも公平性を欠いているように感じた。
　あくまで参考程度の利用価値しかないと思う。