『爆発的楽しさの《フィガロ》』
これは演奏者自身が一番オペラを楽しんでいるのではないだろうか。序曲においてフルトヴェングラーは猛烈な加速で爆発的。ギューデン/ケルビーノは悪びれるところなく、男の声を作ることなく、アッケラカン。ゼーフリート/スザンナは、どの場面でも機転の効いた明るい歌唱で大活躍。シュワルツコップ/伯爵夫人は、深刻なアリア以外では、観客を爆笑させる大ボケぶり。クンツ/フィガロは、十八番だけあって役に完全にはまっている。シェフラー/伯爵は、どん欲な性格を堂々と歌っている。このようなオールスターキャストは、みんな、マイペースで歌っている。オケと歌唱があわなくてもおかまいなし。大味な演奏が生きるのは演奏者に実力があってこそ。1953年、ザルツブルク音楽祭におけるライヴ。ドイツ語による歌唱。