『しっとりと穏やかな色調の風景画に惹き込まれてゆく』
風景画の紹介をするのに、言葉だけでもってせよと言われたら、困る。
作者は「霊官峡」と題する作品を次のように説明している。
「中国の山の中、ここは甘粛省の山道を行っていたとき、とつぜん見晴らしのいいところへでて、びっくりした場所でした。目の下に大きな峡谷がひろがり、その中にひとかたまりの村が見えました」
逆に、これだけの文からこの場面の風景画を想像して描いてみよと言われたら、人さまざまでここに載せられたような絵にはならないだろう。すなわち、美術品はそのもの自体を見せないでは始まらない。視覚芸術の前に言葉はお手上げなのである。
本書は40点の外国風景画を左に置き、右ページに簡単な説明が付されている。
ノルマンディーの田舎、アレンドルフの遠景、チンチョンの広場、パンポルの港など。
しっとりと穏やかに優しく、やわらかな色調におのずと引き込まれていく。