『皮肉なのに優しい』
エイミー・ベンダーを読むのは本書がはじめてだが、どれをとっても不思議な感触の小説だ。
題材が不思議だというだけでなく、読み心地が不思議なのだ。
著者はきっとちょっとひねくれもので、皮肉屋で、でも率直な感性と透明な心の持ち主(矛盾しているが)なんだろうな、と思わせる。
どの物語の登場人物も少し寂しい。もしくは現実に微妙な相容れなさを感じている。その描き方はどこかクールに突き放しているのに、注がれるまなざしは優しさに満ちている(ような気がする)。
登場人物に同化していくような、安直だけど読者としてはごく一般的な読み方はできず、だからといって客観的に分析するような読み方でもなく、見えない第三者としてそっと彼らに寄り添っているような不思議な感覚で読んだ。
大好きだ。